[Apoptosis in malignant brain tumor and application of chemotherapy].

近年アポトーシスの研究があらゆる分野で進歩し, これらの研究によりアルツハイマー病にみられる神経 細胞死やAIDSによるT細胞の減少もアポトーシス の亢進,逆に自己免疫疾患や癌はアポトーシスの抑制 によるという病態の解明がなされ,さらに治療にも貢 献してきた.そして癌細胞においてもアポトーシス が正常に進行出来なくなる疾患として捉えられてい る.この過程には,アポトーシスの誘導に関与する c-myc,c-fos,c-jun などの癌原遺伝子,p 53 癌抑制遺 伝子,さらにアポトーシス抑制 bcl-2 遺伝子などが重 要な役割を果たしている.一方,生体内の酸素濃度, pH,ホルモン,蛋白などの生理的因子の他に,温熱, 紫外線,抗癌剤などの物理的刺激も細胞にアポトーシ スを誘導する.そして太田 はアポトーシスのシグナル 伝達機構の中心的役割をになっている細胞内小器官の ミトコンドリヤが,これらアポトーシス誘導因子の貯 蔵の役割をになっていることを述べている.そこでな んらかの薬剤により癌細胞にアポトーシスを誘導し治 療できる可能性が考えられ,実際に固形腫瘍の縮小あ るいは消失がみられれば,癌治療の理想と思われる. 本稿では悪性脳腫瘍の治療面からみたアポトーシスの 形態を中心に臨床医に役立つと思われる些かの知識を 述べる.